もちろんDVD。もう何年も映画館には行っていない。大画面の良さというのは知っているが、それとのんびり寛いでみるを天秤にかけて後者を選ぶものぐさだ。
TSUTAYAのネット宅配……という時点でさらにものぐさな気もするが……でずっと貸し出し中だったのだが、ようやく借りることができた。
あ、ここからはネタバレです。ネタバレ嫌で観ていない方は,間違っても読まないでください。世の中ネタバレといいながら、結構ぼかして書く方もいますが,私はそんな気は遣いません。ネタバレと書いたらネタバレです。
さて、結論から言えば面白かった。誰かのブログにもありましたが、女版「ジェイソン・ボーン」な感じでした。できとしてはボーンの方が上だと思いますが、好みもあります。
物語は2年前、主人公のイヴリン・ソルトが北朝鮮にアメリカの工作員として捉えられたところから始まる。
そのときソルトを救うために尽力したのが、現在の夫である蜘蛛学者のマイク。二人は結婚し、現在に至るが、その2年目の結婚記念日、ソルトが勤めるCIAにロシアから亡命者がある。
取り調べにあたったソルトに、オルロフというそのロシア人は、ロシアには子供の頃からアメリカ人として教育を受け、いざというとき活動を起こす部隊があり、その一人チェンコフという少女がスパイとしてアメリカに潜入している。(いわば忍者で言うところの草ですね。子供の頃からスパイとして潜伏し、時期を待っているわけです。)
そのスパイは、今回アメリカの副大統領の葬儀に参列するロシア大統領を暗殺するつもりなのだと告げる。
そしてスパイの現在の名はイヴリン・ソルトであるという。
自らの名前を出されたソルトは、罠だと言うが、その瞬間から二重スパイの嫌疑をかけられてしまう。
一方オルロフは、連行される間に二人の局員を殺害して逃げる。
ソルトもまた逃亡を図り、同僚のテッド、防諜部のピーボディらが追跡を始める。ここからはアクションの連続。
自宅に戻り、夫が何者かに拉致されたことを知ったソルトは、追っ手を振り切るため逃げる。捕まりそうになっても、車のコンテナに飛び乗ったり、コンテナからコンテナに飛び移ったり、バイクを奪ったりして、逃げおおせます。なかなか派手です。
ソルトは、葬儀が行われている教会に地下から忍び込み、追悼の言葉を語るロシア大統領の床を爆破し、階下に落とし、大統領に向かって発砲。
この時点で、やっぱりソルトは本当にロシアのスパイだったの?と、私は遅めの理解をしました。しかし、明らかに蜘蛛から抽出した毒を打ち込んでいる音がして、「殺害していない」というのが解るので、実は三重スパイか?とか思ったりして。
ここでソルトは、防諜部のピーボディに捕まる。しかし、護送中のパトカーから脱出を図り、再び逃亡。
ロシアの大統領はこの時点で死んでいないと解るのだが(敢えて「死亡した」と同僚のテッドに言わせるのがクサイが)パトカーの警官を始め、たぶん相当数が怪我しているし、現実ならきっと死人も出ている。一般人は死んでも数には入らないのだ。
そしてソルトは、船に乗り、どこかへ行くのだが、回想シーンがあり、明らかにソルトはロシアの工作員であったことが解る。
ソルトが向かった先には、最初に亡命者としてやってきたオルロフがいる。彼がソルトこと、チェンコフに訓練を行ったのだ。
彼らのアジトに向かったソルトは、目の前で夫のマイクを殺害されてしまうが、冷静に対処し、仲間として迎え入れられる。この辺りの展開は非常に速く、煩わしさがない。
次の指令をオルロフに訊くが、オルロフはNATOの連絡員から次の指示があるとだけ言う。
直後、ソルトはオルロフを殺害し、続けてアジトにいる仲間全てを殺し、NATOの連絡員が待つ飛行機に向かう。
この時点で、ソルトの思惑が全く解らなくるのだ。
ただ解らないとはいえ、物語の進行としてはおかしくないし、ある意味の予定調和ではある。
飛行機に乗ったソルトは、昔一緒に学んだ仲間のシュナイダーから、次の目的が大統領暗殺であることを聞きく。そして最終的にそれを行うのがソルトの役割だと。
ホワイトハウスの地下8階に司令室があり、そこに大統領を行かせるので,そこで暗殺するというのだが、今ひとつこの行はよく解らない。なぜそこに行かせるの?
シュナイダーはNATOとホワイトハウスの連絡将校になりすまして何年も経つので、変装したソルトを随行員として一緒にホワイトハウスに連れて行くのだが、そこでシュナイダーは大統領に向かって発砲し、自爆する。
思惑通り大統領は地下の司令室に向かうのだが、ここは、核戦争でも起こせる安全な司令室で、外からは入れないようになっている。
ソルトは大統領の後を追うが、この時点でソルトの目的がどこにあるのか、実はよく解らない。
つまり、大統領を暗殺するのが目的か、そうでないのか?
エレベータを後から追い、ソルトが司令室へ侵入しようとしている間に、司令室に着いた大統領の下に、ロシアが大統領を暗殺されたために、ミサイル攻撃の準備をしているという知らせが入り、警戒レベルを上げ、アメリカ側もミサイル攻撃に入れるように準備を始める。
ちょっとここに至る話がかなり強引だが、アクションはカッコイイので許すとしよう。
なぜなら、ここで準備に入らないと話が先に進まないからだ。
ソルトが進入しようとしていると知ったシークレットサービスが、外へ行こうとするとき、同行していたソルトの同僚テッドがいきなり銃を発砲し、そこにいた面々を殺し始める。
彼は本名をニコライ・タルコフスキーというロシアの工作員だった。
つまりソルトの仲間だということだ。
彼の目的は、核を使ってテヘランとメッカを攻撃し、イスラム教徒の怒りをアメリカに向けようというのだ。
これが本当の目的で、そのために大統領をここへ連れてこなくてはならなかったわけだ。でもそのことをソルトは知っていたのか?知らないところで聞かされていた節はない。ちょっとパラレルワールド。
司令室を目の前にして中に入れないソルトが(この時点で、他のアメリカ人は、大統領も入れてみんな死んだか、気絶している、すごい!)テッドに中に入れてくれと頼むが、その瞬間にロシア大統領が実は死んでいなかったという報道が流れる。テッドは「やはりな」というが、どこまでソルトを疑っていたのだろう?
それとは別に、テッドは事件の罪をソルトにかぶせるために、色々画策していたのだ。
どうにか司令室に入ったソルトとテッドの闘いが始まり、上階からはピーボディをはじめとする部隊がなだれ込んできた。最後の瞬間に、核の発射を止めたソルトはそこで逮捕される。
上の階へ向かう途中、ソルトは、隙を見てソルトを殺そうと待ち構えるテッドを、逆に手錠を使って首を絞め、殺害する。こういうシーンの描き方がなかなかいいので、ついだまされてしまう。
ヘリコプターで護送されるソルトの前にピーボディ。ほとんど活躍しなかったこの男に、ソルトは事実を話すが、ソルトの目的が、彼女から全てを奪ったオルロフとその教え子たち全員を殺すことだと解る。
教会で自分を殺せたのに殺さなかったソルトの言葉を信じたピーボディは、ヘリからポトマック川にソルトを逃がす。
そしてソルトは森の中を走って逃げる。エンドロール。
ということで、間違いなく続編があるはずという終わり方をする。
さて、確かに面白かったが、実際彼女が何をしたかったのかが実はよく解らなくて、その最大の原因が実は夫とその死にあったらしいのだが、見る限りそこまでのモチベーションを感じない。
また、彼女が大統領を追ったのが何のためだったのか、最初からテッド、あるいはロシアの工作員が大統領の側近にいると信じての行動だったのか、この辺りが今ひとつぴんと来ない。
続編を考えての出し惜しみにしては、意外に全容は描かれている気がする。もちろん裏の裏とか、より巨大な陰謀とか、付け足して描くことも可能だし、そうすればきっと面白い作品ができるには違いない。
エンターテインメントとしてはよくできているので、もう少し脚本を練って欲しかったというのが本音だ。
面白い演出に後から説明を付けた感が否めないのだ。錯綜した話なので難しいのは解るが、そのためにソルトの人間性や性格も、ちょっとぼやけている。
この前に観た「アルマゲドンコード」という映画があるのだが、こちらはロシアの作品で、有名な人はあまり出ていないが、話の展開に雑な部分はかなりあるが、ストーリー自体はちゃんとしているので、とても楽しく見れた。主役の女優のアクションもすごかったし。「ソルト」は。あまりどんでん返しばかり狙うと、どこかで話が破綻してしまうのだな、という典型の映画であった。
褒めているのか貶しているのか解らないが、たぶん両方だ。面白いのでまた見ると思うが、やはりどこか不満を持つのだ。