私はハードロックが好きで、知り合いもそのことはよく知っている。
でも私のハードロック歴は(今となっては長いが)、例えばDeep PurpleやLed Zeppelinが好きだといっても、リアルタイムでは聴いていない。むしろ、Deep Purpleが解散したときに、ラジオから特集でその音楽が流れているのを聴いたとき、なんてうるさい音楽だろう、俺は聴かんな。そう思っていた。
同じようなことは例えばクラシックでも言える。小、中、高と音楽の授業はあったが、ホルストの「惑星」とシューベルトの「魔王」以外で興味を持った作品は一つもなかった。
さて、現在はそのどちらも大好きで聴くのだが、そもそもはハードロックにある。それまでは歌謡曲ばかりを聴いてきて、洋楽といってもせいぜい、TV番組の「ソウルトレイン」やちょっとしたラジオ番組で聞きかじる程度、むしろ映画音楽やポール・モーリアなどが私にとっての洋楽だった。
ある朝、起き抜けのNHK-FMで、洋楽の新譜を紹介する番組をかけていた。学校へ出かける直前のことだったと思う。かかっていたのはRainbowの「Rising」というアルバムで、このRainbowは前出のDeep Purpleにいたギタリスト、Ritchie BlackmoreがELFというバンドを率いて作ったバンドで、このアルバムは2枚目、既にELFのメンバーはボーカルを除いて総取っ替え、曲想はともかく、音色などは別物で、むしろDeep Purpleよりもうるさかった。
ところが出会いというのは面白い物で、私はこのアルバムに打ちのめされた。当時ステレオの無かった私はエアチェック(懐かしいな!)したカセットを聴きまくった。
最初に買ったアルバムは彼らのライブ・アルバムだった。
そこからが私のハードロック人生の始まりで、高校3年の時だった。同時にEaglesの「ホテル・カリフォルニア」なども流行っていたので、嗜好はハードロックにとどまらず、ロック全般に広がっていった。
ちょっと話はずれるが、私は当時映画の「2001年宇宙の旅」を見て大好きになり、その冒頭に流れるR.シュトラウスの「ツァラトゥストラはかく語りき」を買った。
RainbowのドラマーはCozy Powellだったが、彼はライブでチャイコフスキーの「1812年序曲」という曲をバックにドラム・ソロを叩いていた。で、「1812年序曲」を買った。ついでに、なぜか「白鳥の湖」の抜粋版を買った。有名な「情景」のメロディーが好きだっただけで、「ドカベン」の影響ではない。
この3枚がクラシックを聴くきっかけで、言ってみれば、ハードロックあってのクラシックだった。ハードロッカーはなぜかクラシックが好きだ。特にバロック音楽。「Ritchieの何とか言う曲はバッハのコード進行と同じだ」そんな文章を読んですげえなと思った。今考えてみると、よく意味が分からない。
さて、クラシックの話は別の機会に譲るとして、ハードロックだ。
Rainbow以来、多くのハードロックバンドを聴いた。当時はDeep PurpleよりもLed Zeppelinの方がかっこいいというイメージが何となく世間にもあった。渋谷陽一氏とかがいろんなところで公言していたのも一つの原因かも知れないが、確かに、Zepの方が、あか抜けているような感じがするというか、Purpleは要は歌謡曲なのだ。この路線で言えば、WhitesnakeやScorpions、Uriah Heepといったバンドが歌謡ハードロックといった感じだろうか。ある意味Zepは孤高なのだ。そして、Zepの根底にあるのはブルースだが、Purple系バンドはどちらかというとクラシックの臭いがする。そんなイメージの違いが一つの理由であるようだ。
私は当然Zepも聴くが、どちらかというとPurple畑の人で、Ronie James Dio とDavid Coverdaleという二人のボーカリストが好きで、この二人がアルバムを出せば、もう60才だと言われても今だに購入する(Ian Guilanじゃないんだなこれが)。面白くなくても買う。これは対象のアーティストが違っても、音楽好きにはよくあることではないかと思う。
最近のハードロックバンドにどんな人たちがいるのか、実はよく知らない。Aerosmithは最近でも流行っているようで、昔は聴いたが(今でも「Dream On」や「Kings and Queens」「Draw The Line」なんて曲は好きだ)、このところあまり聴かない。実際、Deep Purpleも現在でもバンド活動をしているようだし、新譜が出れば聴くこともあるが、かつての、レコードに針を落とすときの高揚感や、隅から隅までライナーを読んでいた頃の情熱はない。
今これを書いている瞬間、MSGの「Searching for Reason」という曲がかかっているが、ほんとなぜなんだろう?
うちの親父は浪曲と、ディック・峰、村田英雄など、往年の大歌手が好きで、子供の頃、大晦日、東京12チャンネル(現在のテレビ東京)でやっている、懐メロ番組を見ていてレコ大などの裏番組を見られないため、子供心に不満を感じていた。
最近でもその番組は続いているようで、見ると今では、私が子供の頃に活躍していた歌手も多く出ている。下手すると、40代の歌手でも出演している。確かにそのころの歌謡曲やフォークは懐かしいから、意外と耳に心地いい。
私にとっての70年代ハードロックは、この耳に心地いい感を持った音楽である。
音楽の感性というのが、若い頃に耳にした、しかも興味ある音楽によって何らかの形で固められるのかなという気さえしている。もちろん全員が全員ではないし、せいぜい傾向というに止まることだけど、若い人と中年、そしてさらに年配という風に、おそらくは音楽の嗜好はかなり固定的に意識付けされる、そんなようなそんなものかもしれない。といって、新しいものを受け付けないというわけではないだろうが。
今日私は、CDショップで、サイモン・ラトル指揮のメシアンの遺作「彼方の閃光」という曲を試聴した。素晴らしい音楽だった。いずれ購入しようと思ったが、事情があって今日は買わなかった。
きっと、現代のハードロックもいい物がたくさんあるに違いない。なかなか耳にする機会がないので知らないだけだろう。なんだかちょっともったいない気がする。
あ、今サンタナがかかっている。サンタナも好きなんだなあ。
そのうち。