由比敬介のブログ
マジック
マジック

マジック

 ペンのマジックのことをマジックというのは内田洋行の商標らしい。宅急便がヤマト運輸の商標であるのと同じに、マジック、あるいはマジックインキは、特定の商品名を指すと言うことだ。英語では一般的にはマーキングペンというらしい。今時、油性のマジックはどのメーカーのものでも皆「マジック」と呼ぶ。手元にzebraのマッキーがあるが「マッキー取って」とは誰も言わない。「マジックとってだ」。
 そもそもマジックというのは不思議な物だが、これもまた不思議な現象ではある。
 さて、言葉ついでに、日本語の手品はそもそも英語ではマジックだが、辞書を引くと「a conjuring trick; sleight of hand; magic」の三つが出ていて、さらにトランプ手品と引くと「a card trick」とある。trickはごまかしとか策略とか錯覚とあるので、まさに手品はtrickという役の方が本来は正しい。
 マジックはどちらかというと魔法や魔術という、超自然の何かという意味があるから、マジシャンは魔術師の傾向が強いと言うことだ。そもそも魔術が科学的な知識の薄弱だった時代に、手品めいたことでその地位を保っていた一般の手品師、あるいは占星術師とかだということであれば、Magicianという言葉は古今変わらないということにもなる。
 昔のマジシャンが本物だったか偽物だったかは別にして、日本では今、手品が大流行だ。年中テレビで目にする。
 昔から多くの手品師がいたが、恐らく「超魔術」という看板を下げてやってきたMr.・マリックが出てきてから手品の世界は変わったような気がする。かつて先代の引田天巧は「大脱出」という今でいうイリュージョンの元のような大がかりな奇術を多く行った。
 それに比べるとマリックの超魔術は、天巧に比べれば仕掛けは小さいが、それより前のユリ・ゲラーのスプーン曲げを凌駕する、不思議をそこに備えていた。ユリ・ゲラーのスプーン曲げを台無しにしてしまうスプーン折りや瞬間移動などと銘打った、それまで見たことのない「超魔術」を見せてくれた。
 その後、「超魔術」なんて言ってるけど実は手品だろう、なんていう騒ぎもちょっとあったような気がする。そもそもマジックが魔法であれば、超魔術という表現は、それをせいぜい和訳した程度のことでしかない。確か彼は、「超能力」という表現を使った記憶はなく、「ハンド・パワーです」は流行語にもなった。実際に手品だったとしても、まさにすごいハンド・パワーには違いない。
 
 一時期あまり姿を見かけなかったマリックも再び復活し、よくテレビに出ているし、最近の手品師は、皆マリック顔負けのとてつもない手品を披露する。これは日本ばかりではなく、海外でもすごい腕前が沢山いるようだ(当たり前だが)。
 デビッド・コッパーフィールド等という文学作品みたいな大御所や、プリンセス・テンコーなど、最近ではこれでもかという程すごいものが多い。その一部は覆面をした手品師がトリックを明かすことで、むしろ難しい物の価値を高めている。
 最早最近の手品の多くは、超能力との区別もつかない。いや、あれだけの話術、巧みな手さばきなどはある意味本当の超能力と言ってもいいかもしれない。
 人間は錯覚するが、この錯覚もまた人間らしさなのだろうと思う。
 
 今のところ、有名な手品師(マジシャン)の、あるいは有名ではなくとも驚異的なマジシャンの実例を目の前で見たことがない。テレビなどでは、時たま映す芸能人の顔がとてつもなく煩わしいが、一度この目で見てみたいものだな、と思う。
 

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