大御所との死と言ったって、徳川家康ではない。
先日、若杉弘が亡くなった。ちょっと前に黒田恭一も亡くなり、演奏家と評論家、クラシック界の大御所が二人も相次いで亡くなった。
若杉弘の体験は、ぼくは一度しかない。東京文化会館だったと思うが、30年ほど前のマーラーの5番だ。正直もう、演奏もどんなだったか忘れた。ただ、感動したことだけは覚えているが、まだクラシックを聴き始めて日も浅いぼくが、生で聴いた若杉のマーラーというだけで、たぶん当時は感動したに違いない。同じ頃、やはり小澤の千人を聴いて感動したのと同じだ。
小澤は、指揮者らしからぬ服装で、ステージぎりぎりに置かれた指揮台の上で、これまた指揮者らしからぬ構えから演奏に入ったのを記憶しているが、それとは正反対に、若杉はタキシードで、きれいな動きだった。
CDは持っていないので、実際のところ僕の若杉体験はその一度きりだ。いや、実はレコードでむかし聴いたことがあるような気もするのだが、その程度の記憶はないのと同じだ。
ぼくの認識としては、世界の小澤と言われるように小澤征爾は日本の指揮界でNo1だと思う。で、若杉弘はやはりその次に位置するとずっと思っていた。確かに朝比奈とか、有名どころでは岩城宏之とか、小林研一郞とか、いろいろ居ると思うが、小澤と若杉は、世界、特にヨーロッパで活躍した最初期の日本人指揮者ではなかったかと思う。
今でこそ、大野和士とか佐渡裕とか海外の名の知れたオケを振る指揮者も増えてきたが、その先駆けがこの二人だったように思う。
小澤は、サンフランシスコやボストンというアメリカのオケを経て、ついにはウィーン・フィルを振るまでになったが、若杉の場合は、ぼくはケルンしか知らない。
最近オーケストラコンサートにあまり行っていないので、ちょっと寂しいが、生前にもう一度聴きたかった指揮者だったなあ。
もう一人の黒田恭一は、時々NHKで見たり、昔はよくNHK-FMで解説を聞いた。しかし何より、レコ芸などを通じて、特に交響曲や管弦楽などの評論を多く読んだ。印象としては、カラヤンの好きな人という印象だったが、CDを買う際などには結構参考にもさせて頂いた。
演歌や歌謡曲でも大御所と言っていい人が最近多くなくなるし、まだ若いので大御所などとは言えないかも知れないが、マイケル・ジャクソンだって死んだばかりだ。彼の「Beat It」は、当時から今でも、愛聴曲の一つだ。「thriller」でも「BillyJean」でもない、「Beat It」だ(あ、「Eat It」も好きだ)
彼ら全てにご冥福を祈りたい。