フィデリオ

 新宿の新国立劇場でやっているベートーヴェンの「フィデリオ」を観てきた。
 指揮はミヒャエル・ボーダーに東フィル、タイトルロールにガブリエーレ・フォンタナ、夫のフロレスタンにトーマス・モーザー、監獄所長ピツアロにペテリス・エグリーティス、監獄の番人ロッコにハンス・チャマー、その娘マルツェリーネに水嶋育、大臣ドン・フェルナンドに河野克典他、という配役だった。
 そもそもベートーヴェンのオペラというだけで珍しいが、なかなか演奏される機会は少ない。ところが昨年サイモン・ラトルが来日して上演しているし、実は意外によくやるのか?と思わせたり。
 実は私は新国立劇場デビューで、初めてにしては当日券で端っこの端っこで観たのだが、やはりオペラはかぶりつきがいい。歌手の表情まで肉眼で見える位置で見るのが面白い。さすが奥の上の方ではいいものもよく見えないかも知れないと思った。最初から観るつもりであれば、CDも持っているので、久々なので予め聴いておけば良かったと思ったが、なんのなんの、ベートーヴェン節炸裂なのでそれほど気にする必要もなかった。
 そもそもこのオペラは男装したレオノーレがフィデリオと名乗っているから「フィデリオ」なのだが、ベートーヴェンにはこのオペラように書かれた「レオノーレ序曲」が別に存在する。しかも複数あったりするわけだ。なんだかややこしい。冒頭から交響曲のような序曲で始まる辺りがモーツァルトなどとは根本的に違うが、だが、その重々しさが全体を支配しているので違和感はない。
 歌手はトーマス・モーザーしか知らないが、フロレスタンは第2幕にしか出てこないので、ちょっと事情もあり、あまりまともに聴いていなかった。モーザーは手元にはマーラーの「大地の歌」を、カツァリスのピアノ伴奏で歌ったCDが1枚あるが、探せば他にもあるかも知れない。大御所だ。もっとちゃんと聴けば良かった。
 第1幕ではマルツェリーネが最初に歌うアリアがなかなか良かった。水嶋さんは遠くて顔は判らなかったが、出だしからふくらみのある声で堪能できた。前半は門番のヤキーノがテノールだが、中心になるロッコとピツァロがどちらもバスなので、このことも暗さを助長している。まあ、暗いオペラなのでそれでもいいのかも知れないが、なんだかメリハリが・・・
 最後しか出てこないがフェルナンド役の河野さんも力強くて良かった。
 尤も、オペラ全体はどうも今ひとつの感がぬぐえない。ベートーヴェンがこれ1曲しか書かなかった理由が分かるような気もする。オケがうるさい。昔大学の先輩が、ベートーヴェンは耳が聞こえなくなったので大音響の曲を書いたということを言っていたが、若干頷けてしまった(くれぐれも、差別的な意味はない)。金管がかなり炸裂していた。
 多くのオペラが、終わりどころというのがあまり上手くないという風に思っているが、この曲もそうだ。曲の長さのバランスなのか、何度もここで終わりかと思った。CDではそんな記憶はなかったのだが、もう大分前だからな、聴いたの。マーラーの交響曲第3番が、いいかげんにしろよ!と言いたくなるような終わりなのだが、ストーリーが絡むと、非常に難しい。私など、レオノーレが夫を助けた時点で全曲を終わらせてもいいような気がするが、まあ、ベートーヴェンの時代はそういう時代ではなかったのだろう。
 まあただ、生でオペラにしてもオーケストラにしても聴くのは、CDやDVDと違って独特の雰囲気があり、概ね楽しめる。もうちょっと価格が安ければいいなあ、といつも思うのだが、演奏者のことを考えるとやむを得ないな。特に日本では、安くしたから観客が動員できるとは思えないし。それにしても新国立劇場は雨にも濡れないで行けるというのは、日本のこういう劇場の中では一番いいな。

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