私が「タイタン」と書くと、マーラーの交響曲第1番をテーマにして書くような感じだが、今回は、土星の衛星だ。
土星は太陽系で2番目に大きい惑星で、衛星が現在判っているだけでも33個あるらしい。子供の頃本で読んだ時には一桁だったような気がする。数十年で3倍以上に増えている。たいしたものだ。
タイタンは中でも最も大きいから、誰が発見しなくても、肉眼で見えていた最も遠い太陽系の惑星だ。これより外の海王星や冥王星は、肉眼では見えないので、望遠鏡ができるまでは、太陽系の惑星は6つだったことになる。
英語名はサターン。「サタン」じゃない。農耕神で、ジュピターのお父さんだ。ローマではユピテル(昔こんな名前のレコード会社があった)。ギリシャのゼウスと思っていたが、今回調べてみると、確かにそうなのだが、ユピテルそのものは、ギリシャ神話とどうかする以前から神話の主神だったらしい。
で、サターンはギリシャ神話のクロノスと言うことになったようだ。私などはクロノスと言われた方が分かりやすい。クロノスは巨人族、つまりティ-タン>タイタンと言うことだ。クロノスは自分の子供を全部飲み込んでしまうような神様で、農耕神というにはほど遠い。単に主神のおとっつぁんということで、クロノス=サターン(サトゥルヌス)と言うことになったのだろう。
でも土星の衛星にはクロノスがらみの名前が多い。
タイタンを始めとして、そのタイタン族の名前が順番に付いていたりする。
ミマス,エンケラドゥス,テティス,ディオネ,レア,タイタン,ヒペリオン,イアペトゥスという最初の頃に名前が付いているものは全て巨人族の名前だ。
タイタンと言えば「タイタンの妖女」(カート・ヴォネガットJr)だが、太古の地球に環境が似ていそうだということでSFにもよく取り上げられている。実際にどうなのか判らないが、少なくとも地球より寒そうなので、住むには適していそうもない。
今回探査に向かった「ホイヘンス」は、土星の輪っかやタイタンなどを望遠鏡で発見したその人の名前で、350年かけて、ホイヘンスは自分で見つけた土星の衛星に着陸したことになる。なんかいいな。
「2001年宇宙の旅」では(小説の方だが)、ボーマンはイアペトゥス(ヤペトゥス)に向かう。
土星というのはその輪もそうだが、なかなか神秘的な惑星なのだ。
ホルストの「惑星」では、土星は老年の神だ。木星の明るさや、火星の猛々しさに比べると、非常に地味だが、その分美しい。別に静かな曲というわけではないし、途中は鐘や太鼓でどんひゃららみたいなところもあるが、全体としてはじみーだ。
望遠鏡で空を除いていた頃は、土星はその輪を見て楽しんでいた。ホイヘンスが見つけたタイタンは見たことがない。17世紀に見えているのだから、口径10cmの20世紀の望遠鏡で見えないことはなかったと思うのだが、その分空が明るいから難しいのかも知れない。
でもこうやって、一つ一つ宇宙の不思議が解明されていくのだろうが、その地に自ら立つことはないのだと思うと、ちょっと寂しい。100年後に生まれていたら、宇宙旅行は当たり前になっているのだろうか?
21世紀って、そんな世の中だと思っていた子供の頃、やはり100年経ってもあまり変わっていないということもあるんだろうか?ああ、1000年くらい生きたいな。