というニュースが本日発表された。
DRMフリーとは、暗号化されたキーなどで保護されていないファイルで、つまり、音楽がこれまで特定の機械でないと聴けなかったり、コピーができなかったりということから解放されるということだ。
海外では既に多くがそうだし、日本でも増えつつあったが。既にiTunes Storeでは始まっていて(iTunesは形式がAACというやつなので、MP3よりは汎用性が今のところ低い)、アマゾンで始まれば、本格的に「昔に戻れる」。
なぜなら、一部のCDを除き、ネット環境が出てくるまでの音楽はほぼDRMフリーだったからだ。若い頃、買ったレコードから、あるいはラジオのエアチェックで、多くの音楽をカセットに録音し、聴きまくった。私の場合はあまり多くなかったが、人との貸し借りも大分あった。
そして、おそらくだが、こうやって育った世代が、自分たちの利益を過剰に保護することになるDRMを生み出したのだ。
そもそも著作物は著作者のものだ。著作権は著作者にある。音楽の場合は、隣接権といって、演奏する人間にも一部の権利が存在する。これらの権利は当然守られるべきだし、勝手にコピーした音楽を売って儲けるのはれっきとした犯罪だ。
だが、この犯罪抑止を、正当なユーザーの利益に押しつけてきたのが、これまでのDRMというシステムだ。
現にこれまで購入して、今は再生できないファイルがいくつかある。改めて買うのも片腹痛い。
世の中のバランスが、すぐに演奏家→エンドユーザーになることはまず無い。音楽には作詞・作曲・演奏の他に、レコーディングと編集作業が必ず伴うからだ。だが、そこから先の制作は割と早くなくなる可能性はある。CDもDVDもネットワークで手に入るなら資源の無駄という議論はいずれ起こってくる。紙の本もそうだ。森林伐採と結びつけられる時代が必ず来る。
この世から紙がなくなることはないが、紙に印刷しなくても問題がないものというレッテルを貼られてしまえば、それで終わりだ。
そしてそういった本や音楽はネットを通じて手に入り、いくらでも複製ができるようになる。
海外に比べると全然高額な日本の配信の理由がどこにあるのかは分からないが、日本最大で11,000曲という規模なので、なかなかCDに取って代わるのは難しいだろう。CDが無くなるというのは、このオーダーが、今の1,000倍くらいになるということではないか?少なくとも、これまで販売された楽曲と現在発売されている楽曲が手に入るようになって初めて、CDは駆逐される(別のメディアが出てくる可能性はあるが、比較的マイナーチェンジだろう)。
クラシックなどは、なかなかそこに追いつくのは難しい。それでもいずれはなるのだ。
さて価格だが、1曲150~200円というのはこれまでとさほど変わっていない。
かつてレコードはシングル2曲で一番高い時代に700円だった。アルバムは10曲程度で2,800円。CDに代わりシングルCDは4曲入で1,000円、アルバムは12~16曲くらいと増え、日本版で3,000円、海外アーティストのものが2,500円。もちろんこれが平均でもないだろうが、おおよそはあたっていると思う。つまり1曲あたり、150~350円で売られていたわけだ。印税はおおよそ10%くらいだと聴いたことがある。これが楽曲に係わったアーティストなどで分けられるわけだ。その差額が、制作会社、配送会社、ショップなどの利益になる。
印税を15円から30円と考えれば、ネット配信の場合、150円は高額すぎる。せいぜい50~100円だろう(実際アメリカでは1$くらいらしい)。
100万ダウンロードでベストセラーだとすれば、50円でも売り上げは5千万円。10曲で5億になる。
音楽ビジネスというのは、ラジオとレコードというメディアができて以来、実は一攫千金ビジネスで、クラシックでさえそれは例外ではない。カラヤンが、何であんなにお金があったかは、今更考えるまでもない。その反対に、演奏だけで仕事をしている人たちは、苦労を強いられる。
だがそれがビジネスで、ネット社会はこれまで機会を与えられなかった音楽家にも、日の目を見る機会を与えてくれる。よりミュージシャン・ドリームでもあるわけだ。同時に、価格を安価にすることで、購入は楽になるから、数が出ることになる。
もちろんそれでもただで手に入れたい人たちがこの世からいなくなるわけではないが、安価であれば、買ってもいいという人たちは増えるはずだ。音楽業界には、是非そういう考え方をして欲しい。買う側にも、楽曲を手に入れるときの損益分岐点があることを、実は売る側は気づいていない。
いや、それでもなお、DRMフリーは犯罪を増やすはずだが、そこは警察の領分だし、これまでもCDから落とせば問題なかったので、増えるのはそうは多くないだろう、ファイル交換ソフトなどは今後もなくなるはずはない。だが、それでつぶれるほど音楽は脆弱ではない。自ずとボーダーラインはある。
さて次は、コピー10という忌まわしい仕組みをいつまでも入れている映像業界だ。