「ファイナル・カウントダウン」といっても、ヨーロッパの歌じゃない。この場合ヨーロッパはロックバンドのヨーロッパだ。妙な二重説明。
「ファイナル・カウントダウン」は、カーク・ダグラスが主演した1980年の映画のことだ。同時期のタイムスリップ物では、「フィラデルフィア・エクスペリメント」があるが、なぜかこちらの方は評価が高いが、「ファイナル・カウントダウン」は評価が低い。カーク・ダグラスと、マイケル・パレを比べて、パレの方がかっこいいからというわけでもないだろうが、なぜかそうだ。
確かに、ステーキのような名前をした原子力空母「ミニッツ」が、実験公開中に変な嵐を抜けると、そこは太平洋戦争前夜の太平洋にタイムスリップし、ちょっといざこざがあって、元に戻るという、書いてしまえばたわいもない話なのだが、落ちが好きだ。
当時の最新鋭の戦闘機が零戦と戦って撃ち落とすなんていうシーンもあるが、メインはタイムパラドックスなので、真珠湾攻撃をミニッツで阻止しようという目論見は敢えなく潰える。
大統領候補の上院議員の秘書にキャサリン・ロス、そしてその相手役は名前を知らないが、ミニッツの士官である彼が結果的にハワイ近くの島に置き去りにされ、40年の時を経て、帰還したミニッツから降りたマーチン・シーン(チャーリー・シーンの親父だが顔がそっくりだ)を、ベンツだかロールスロイスだか忘れたが、高級外車で出迎えるというシーンは、一見べたべたな終わりのようだが、意外にないはずだ。
マーチンよりも40才年老いてしまった士官は「つもる話もある」といって彼を車に迎え入れる。全編を通じて音楽もなかなかいいし、スペクタクルに流れがちなSF映画の中では、なかなかいい味を出していると思う。
確かに、SFとしては1980年という年には、アイディア的にどうかという批判があってもいいが、だったらスター・ウォーズはどうだ?1930年代のSFだと言うことになる。アイディア云々よりも、いかに面白いかだと思うが、私的には至極面白く、何度も見返している作品だ。
カーク・ダグラスといえば往年の名優で、息子も活躍しているが、さすがに「スパルタカス」とどちらがいいかと訊かれると悩むところだが、その程度に気に入っている作品だ。私は「十戒」を始めとするあのころのスペクタクルものがとても好きで、また別に機会に「バラバ」を取り上げたいと思うが、それに比肩する楽しさだ。
タイムスリップした空母が、どこにいるかが判らなくなり、通信のやりとりの中で、「こちらは空母ミニッツ」というと、「何を言っている、ミニッツ提督はまだ現役だ」というようなシーンがあったと思うが、こういうところが、私のツボなんだなこれが。