由比敬介のブログ
飢餓海峡
飢餓海峡

飢餓海峡

「飢餓海峡」を最初に知ったのは、確か映画だったが、見たわけではなく、小説から入った。水上勉という作家は、私にとっては全く未知の作家で、イメージとしては、私が余り馴染まない日本文学の作家というものだった。
 私がそれを手にした理由は、恐らくタイトルだし、キャプションを見なければ、いまだに読んではいないだろう。
 これまで北海道の話は何回か書いたが、そもそも北海道を訪れる前は東北を旅することが好きだった。今でももちろん好きだ。鄙びたという表現をよく使うが、この鄙という言葉は、田舎という意味だと思うが、都会に住んでいれば、何も東北だけが鄙びているわけではない。鄙にはまればなどという表現も使うが、美人が都会に多いとすれば、それは総人口が多いからに他ならない。
 東北好きなのだが、車を運転しない(人によってはできないという表現も使うが)私にとっては、下北というのは実に旅しづらい土地で、あの下北半島というのは実に広大で辺鄙なのだ。何度か計画を立てながら、現地で挫折したりしている。
 津軽は意外と楽だ。五能線や津軽鉄道、バスなどが比較的便利に動いているからだ。しかし津軽となると、大湊まで鉄道は繋がっているが、その先が結構不便なのだ。いや、思ったより距離があるといった方がいい。大間崎や仏ヶ浦などを訪れようとすれば、やはりマイカーかレンタカーでないと多分辛い。
 さて、そんな経験から、下北というのは軽い見果てぬ夢みたいなところがあり、まさに「飢餓海峡」の最初の舞台は戦後の荒涼とした下北なのだ。
 
「飢餓海峡」自体はミステリーに分類すればいいのか、純文学に分類すればいいのか、あるいはエンターテインメントと言っていいのか解らないが、私には少なくとも最後の分類がしっくり来る。
 主人公の樽見京一郎こと犬飼多吉は、悪いジャン・バルジャンみたいなところがあり、内容全体はそんな男と、女の生き様のぶつかり合いというか、非常に日本的な愛憎劇である。
 小説はすごく面白かったし、三國連太郎が主役をやった映画も面白かった。NHKがドラマ化した若山富三郎のものは見ていないが、是非見てみたいと思う。
 薄幸で健気な八重と、人の善意を信じられない悪人の犬飼の対比と悲劇は、戦後という舞台で、非常に重々しくも快活に描かれている。
 実は細かいところは覚えていないので、これを機会に読み直しをしたいと思う。DVDも購入したいところだが、どうして邦画のDVDはこんなに高価なのだろう。買う人が少ないというだけとは思えない。
 洋画が物によって1000円を切る時に、5000円前後の価格を付けている。文庫だって、上下巻でせいぜい1500円前後ではないだろうか?
 レンタル屋で借りると同じ値段なのにどうして?と思ってしまう。
 しかも、洋画の方が、吹き替えや字幕を付けるという手間がかかっているはずだ。この辺りの仕組みが、私にはどうも解せないのだが?

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