表題の本を読んだ。作者は著名な理論物理学者のカク・ミチオ氏。
現代の科学的知見に基づいて、SF的なアイディアを実現不可能レベルで三段階に分けて解説している。
非常に面白くかつ、読み応えもある本だ。
現在これをきっかけに、科学本読書週間に入ってしまった。
さて、不可能レベルの三段階は
I 現時点では不可能だが、物理法則に反していないので遠からず可能になる可能性が高いもの
II 「物理的世界に対するわれわれの理解の辺縁にかろうじて位置するようなテクノロジー」
III 既知の物理法則に反するテクノロジー
と分けられている。
要するに、できるかもしれない、できたらすごいぜ、絶対無理に別れている。尤も、絶対無理も、カク氏は言い切っていない。この柔軟さは科学者にとって必要なのだろうなと思う。
そのIIIには「永久機関」と「予知能力」しか含まれていない。
そして驚くのはIの項目だ。
「フォース・フィールド」「不可視化」「フェイザーとデス・スター」「テレポーテーション」「テレパシー」「念力」「ロボット」「地球外生命とUFO」「スターシップ」「反物質と半宇宙」
これだけのものが含まれている。できそうもないものがたくさん。
フォース・フィールドとは、いわゆるバリアだ。エネルギーで外部からの攻撃などを防ぐ障壁のことだ。カク氏はスタートレックのファンのようで、随所にスタートレックが例に挙げられている。フェイザーもスタートレックの「フェイザー砲」という武器のことだ。
このエネルギー式のバリアというのはアニメなどでは、ごく当たり前のように出てくる。 とても便利だし、多くの災害から人間を守ることができる装置だから、是非とも完成させて欲しいが、不可能レベル1でも読んでいると、「そうか~できるのかもしれないが、その頃には俺はこの世にはいないな」という感じだ。
これらの中で、「テレポーテーション」は言ってみればドアのないどこでもドアなので、夢は膨らむし、実際量子レベルでは成功しているらしい。人間が瞬間的に空間を移動できるというのとは、そもそも違うようだが、科学はこれまで、その時々で不可能と思えることを可能にしてきてもいるので、誰が言ったか忘れたが、「人間は頭で考えられることは実現できる」のかもしれない。
こういう書物を読むと、今の科学者が、現在の実利的なことから、将来や夢物語みたいなことまで、非常に多くのことを考えているのが解る。そして自分がその中にいないことが、非常に残念でもある。
また、あるいは可能になるかもしれないというこれらの事象について、それをこの目で確認できそうにないこともまた、残念である。
こんな楽しい話を読みながら、でも感想はそこかよ!
宮崎あおいではないが、ぼくも生まれ変わる予定は今のところ無い。でも望むらくは何度でも生まれ変わって、未来を見てみたいものだと、つくづく思うのだ。